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梁山泊グループによる相場操縦事件(下)

梁山泊グループによる相場操縦事件(下) (九州企業特報)


錬金術に利用された16件のM&A


 アイ・シー・エフには、梁山泊グループの1社であるビタミン愛が翼システムが筆頭株主として乗り込んできた。その直後から社長の佐藤克容疑者(32)は、証券市場での資金調達が可能な上場企業という立場を生かし、2年間で16社のM&A(合併・買収)を繰り返したが、M&Aは株価を刺激するための錬金術だった。


 梁山泊グループは、2度果実を口にした。自らが関与する企業をアイ社に高値で売りつける一方、アイ社の売上に協力して高株価を演出、その間にアイ社株を売り抜けた。彼らは40億円荒稼ぎした。


食い物にした面々


 アイ社を食い物にした重要な人物が少なくとも3人はいる。


 梁山泊グループのオーナーの豊臣春国容疑者(57)=ビーマップ事件で公判中=は、元山口組系暴力団幹部。裏社会での通り名は松山春国で、日常は松山や近藤など複数の名前を使い分けていた。


 豊臣容疑者の株の指南役である川上八巳氏=ピーマップ事件で公判中=は、京都の同和団体・崇仁協議会の代表だった藤井鐵雄氏の親戚。崇仁地区がJR京都駅前の一等地にあるため、協議会はバブル経済の最中、消費者金融大手の武富士と組んで地上げを請け負って巨額の利益を挙げた。だが、武富士と決裂。藤井氏が逮捕、協議会は分裂。拘留中に銀行口座から巨額な預金が引き出されていた。その前後から、協議会幹部が白昼射殺される事件が続発した。当時、藤井氏の側近をしていたのが川上氏だった。その後上京して、ベンチャー企業に対する投資家となった。


 もう1人が榎本大輔・元ライブドア取締役(36)。22億円払ってロシアのソユーズ宇宙船で日本人初となる民間での宇宙旅行を行うと発表し、時の人となった、あの人物だ。


 榎本氏はソフト販売会社プロジーを株式交換方式で、堀江貴文氏=ライブドア事件で公判中=のオン・ザ・エッヂに売却。同社に入社し、取締役兼最高戦略責任者に就任。M&Aを担当し無料プロバイター「ライブドア」の営業全部を1億2,000万円という安値で譲り受けた。オン・ザ・エッヂがエッジを経て、ライブドアに社名を変更する。


 榎本氏は2003年6月に退社。株式交換で入手したライブドア株を売却したキャッシュを元手に、ベンチャー企業への投資と宇宙旅行を計画した。最初に投資した先がアイ社。投資したのは2004年1月。梁山泊グループのビタミン愛が筆頭株主として登場した時だ。榎本氏は最高戦略顧問に就任し、M&Aを仕掛けていく。


M&Aで資金を吸い上げる


 ビタミン愛は経営支援目的でアイ社株を取得したとしているが、これは表向きの話。上場会社であるアイ社株を錬金術の道具に利用するためである。株価を吊り上げるには、アイ社の役員の協力が必要だ。取り込んだのが、社長の佐藤克容疑者である。ビタミン愛が大株主になるにあたり、損失保証を取り決めたとされている。暴力団をバックにする威圧の前に、佐藤容疑者は梁山泊グループの手駒として動くようになる。


 佐藤社長は、取り憑かれたようにM&Aに血道を上げていった。買収の手法は、ライブドア流の株式交換方式である。佐藤社長と買収担当役員だった小野高志容疑者(36)は、ライブドアがウェッブキャッシングで使った手法を熱心に学んだ。


 アイ社は、毎月1件のペースで株式交換による企業買収を繰り返した。佐藤社長がM&Aに柱に置いたという映像コンテンツの会社はおよそ関係なかった。梁山泊グループが、関係する会社をアイ社に売りつけて、資金を吸い上げていった。アイ社をATM(現金自動引出機)にしたのである。


 株式交換方式による最初の買収案件は、2004年3月のワン・ウイング。その大株主は豊臣容疑者の株取引の指南役といわれる人物だ。アイ社は、経常赤字2億円のパッケージソフト卸会社を3億7,000万円(現金換算)で買い取った。


 同年12月に、梁山泊と関係が深い広告代理店の大阪第一企画を買収。直前期の売上高4億1,000万円で債務超過にあった同社の買収価格は8億3,000万円(現金換算)。


今回逮捕容疑となったのが、大阪第一企画のM&Aだ。本来は1億円ほどの企業価値しかないのに、アイ社側が、ライブドアの監査も担当していた元港陽監査法人所属の公認会計士、田中慎一容疑者(35)に8億円の資産査定書をつくらせた。


 2005年5月には、指南役の川上氏の口利きで、大阪市に本社があるコインパーキング場運営会社エイチ・エヌ・ティー(HNT)を17億7,000万円(現金換算)で買収。3期連続経常損失の債務超過に陥っていた会社をである。その後もHNTやそのオーナーなる人物に資金を貸し付け、最終的に投融資額は総額約20億円に達した。HNTは買収1年半後に自己破産した。アイ社の貸付金は不良債権化した。


 アイ社が買収した16社は、ほとんどがこの手の会社だった。


アイ社株の高値売り抜け


 次は出口戦略である。株価を上げて、豊臣、川上、榎本といった連中が、売却しやすい環境をつくることだ。川上氏、榎本氏、佐藤社長のトリオによるアイ社の株価つり上げ作戦は、M&Aと株式分割である。


 アイ社は企業買収に乗り出した直後の2004年4月、7月20日に株式分割すると発表。M&Aへの期待と株式分割が材料になって株価は上昇した。


 2004年8月、豊臣容疑者らは保有する株式数の6割を、川上八巳氏や榎本大輔氏の妻(名義)ら4人に計8億6,4000万円で売却した。残りの保有株は同年11月、投資会社に26億8,200万円で売却して手仕舞った。


 ビタミン愛は翼システムからICF株を6億7,600万円で取得した。高値で売り抜けて、ビタミン愛名義の取引だけで28億7,000万円の利益を得た。豊臣容疑者には、大阪第一企画などが株式交換で得たアイ社株も渡っており、それらも売却して、梁山泊グループ全体で計40億円を荒稼ぎした。


 アイ社株はいったん下落したが、買収作戦によって2005年5月には再び急騰。その過程で川上被告は売り抜け、10億円稼いだとされている。


 アイ社の株価急騰は、2004年が豊臣容疑者の高値売り抜けのため、2005年は川上氏、榎本氏ら豊臣容疑者の株売却の受け皿になった4人の高値売り抜けのために仕組まれたものだった。売り抜けた榎本氏は2005年6月に最高戦略顧問を退任した。


 これがアイ・シー・エフを舞台に繰り広げられた錬金術だった。

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